合気道が心身の健康や成長、また人間関係に与えるよい影響について書かれた研究論文などがあります。
以下で、その一部を紹介したいと思います。
合気道のトレーニングが心身に与える影響
[論文名]Almosawi, H. S., & Osman, A. (2015). “The Impact of Aikido Training on Psychological Health.” International Journal of Sports Science and Physical Education.
この論文では、合気道のトレーニングがストレスの軽減や精神的な安定に寄与することが示されています。
特に、呼吸法や瞑想の要素が心身のリラックスに役立つとされています。
ストレス対処能力の向上は、困難な状況でのやり切る力を強化する要因となります。
中高年者における合気道の健康効果
[論文名]Tanaka, H., & Yamamoto, Y. (2012). “Health Benefits of Aikido Practice for Middle-aged and Older Adults.” Journal of Aging and Physical Activity.
この研究は、中高年者を対象に合気道のトレーニングが身体機能やバランス能力を向上させることを確認しています。
また、定期的なトレーニングが筋力や柔軟性の向上に寄与することが示されています。
これにより、特に高齢者にとっては転倒予防に役立つ可能性があります。
合気道による、精神的健康とストレス軽減
[論文名]Mullen, K. A., & Habersetzer, S. (2010). “Aikido and Psychological Well-being: A Study of Self-efficacy and Stress Coping.” Journal of Martial Arts Research.
この研究は、合気道が参加者の自己効力感やストレス対処能力を向上させる効果を持つことを示しています。
特に、対人関係の改善や自己肯定感の向上が報告されています。
合気道は、他者との調和を重視するため、社会的な評価を高める助けとなる可能性もあります。
ちなみに、精神的な安定やストレスの軽減に役立つのは合気道のトレーニングが、呼吸法や瞑想の要素を含むためだと示しています。
なお「自己効力感」は、自分の能力に対する信頼感を意味し、これが高まることで自己表現力ややり切る力が向上する可能性があります。
合気道の心血管系への影響
[論文名]Suzuki, N., & Iwamoto, T. (2008). “Effects of Aikido on Cardiovascular Health.” Journal of Sports Medicine and Physical Fitness.
この研究では、合気道のトレーニングが心血管系の健康に良い影響を与えることが示されています。
具体的には、定期的なトレーニングが血圧の低下や心拍数の安定に寄与することが確認されています。
リーダーシップスキルの向上
[書籍名]合気道の指導者養成プログラムにおけるリーダーシップスキルの育成(日本体育学会誌)
合気道のトレーニングを通じてリーダーシップスキルが向上することが示唆されています。
特に、相手を尊重しながら導く能力が養われるとされています。
番外編:合気道の健康効果(YouTubeより)
さまざまなテーマに関するハウツー動画を提供している「Howcast」というYouTubeチャンネルで、合気道による健康効果が紹介されていました。
解説をしている方は、当道場および合気道団体とは関係がございませんが、合気道に通底する本質を語っておられると判断いたしました。
そこで、少しでも多くの方に合気道を深く知っていただきたい想いから、このページで紹介させていただくことにいたしました。
動画では、英語で解説されていますので、以下に解説の日本語訳を掲載いたします(※理解促進のため、一部意訳しております)。
NewYork Aikikai インストラクター Mike Jones氏は、合気道の健康効果について上記の動画でつぎのように答えています。
合気道から期待できる身体的なメリットは、すでにいくつかのビデオをご覧になったと思いますが、高い有酸素的運動であることです。合気道は、筋力トレーニングに重点を置く武道ではありません。お稽古の前に、腕立て伏せや腹筋運動をたくさん行うわけではありません。
しかし、お稽古の50%は転倒して起き上がることです。これを1時間か2時間つづけて行うと、150回、200回とスクワットをこなしたことになります。私の個人的な意見では、これはランニング、ヨガ、体操よりも全身を使う動きや活動です。合気道は、全身を使う必要があります。
そのため、全身的な運動を通じて持久力、安定性、筋力、スタミナ、柔軟性が向上します。合気道は、ストレッチに重点を置いていません。合気道は、ハイキックをする必要はありません。しかし、柔軟性を保ち、動き、適応できるという点では、非常に大きなメリットがあります。
また、周囲にかなりの意識を向けるようになり、周囲の状況に気づかないということがなくなります。つねに(周囲に)意識を向け、身体を適度に拡張し、道場や日常生活で生み出したエネルギーを活用できるようになるはずです。
日常生活で期待できることとしては、スタミナを増強できます。とても楽しみながら、体重を減らすのにとてもよい方法です。ストレスを発散し、柔軟性を保ち、動き、日常生活で意識と動きを生み出す優れた方法です。
合気道は、武術的な側面以外にも、非常に有益な活動になり得ます。
まとめ:合気道がもたらす12の驚くべき健康効果とメリット
合気道を通じて、以下のような効果が期待できると考えられます。
- 心身のリラックス
- ストレスの軽減や精神的な安定
- 困難な状況でのやり切る力を強化
- 中高年者における、バランス能力と柔軟性の向上
- 自己効力感の向上
- 自己表現力や、やり切る力の向上
- 対人関係スキルの向上
- 他者との調和による、社会的な評価の向上
- 血圧の低下や心拍数の安定
- リーダーシップスキルの向上
- 相手を尊重しながら導く能力の向上
- 持久力、筋力、スタミナなどの向上
以上のことや、私自身の実体験も踏まえますと、合気道のユニークな特性(例えば、攻撃性を排除し、防御と調和を重視する点など)は、他の格闘技や運動とは異なる健康効果をもたらす可能性があると考えます。
記事執筆者
- 浪花 章生(Akio Naniwa)
- 心身統一合氣道 師範
- 心身統一合氣道 大阪あびこ教室・堺市石津教室 代表
小さいころから身体が弱く、運動神経も腕力もあまりない子どもだった。
また当時は、乗り物酔いがひどく和歌山から天王寺へ向かう1時間程度の道のりで嘔吐していた。そのため、小学校から高校までの修学旅行はつねに保健の先生とともに別の車で移動せざるを得なかった。
大学生になったときに父に勧められ、合気道をはじめる。運動が苦手な自分でも、お稽古できることのよろこびを覚え、毎日のように稽古に励む。
その結果、乗り物酔いが改善し、大阪から栃木や千葉に合宿に行ったときにも、まったく酔うことがなくなった(合気道は受け身をするので、身体が回転することで結果的に自律神経のバランスが整った可能性が高い)。
その後、社会人になってからも稽古に励み、師範となる。
合気道を通して心身ともに丈夫になり、プラスの心をも持つことができた経験を多くの人たちに伝えたい想いから、51歳で仕事を退職し、自身の教室を開く。
現在も、会員たちとともにお稽古で汗を流す日々を送っている。