柔道やレスリング、相撲などの格闘技は、まず受身を取るところからお稽古を始めます。相手から投げられて体が地面に激突する際に受ける衝撃をやわらげ、頭をはじめとする重要器官を護ることが目的です。左右まんべんなく受身の稽古をすることで、体の偏りをなくし、バランスがとれた体になります。
体を護る
合気道も同様に受身からお稽古を始めます。他の種目と同様、体を護ることが最大の目的ですが、それ以外にも重要な目的があります。
柔道やレスリングなど、勝敗を決する試合において受身を取るということは投げられることであり、すなわち負けを意味します。勝負の世界ですから、投げる方は勝つために何としてでも投げようと技を仕掛けていき、受ける方は投げられまいと必死にこらえます。この真剣勝負の中で自己を鍛え、高めていくのがこれらの格闘技の目的でしょう。
お互いの気を高める
一方、試合のない合気道には勝ちも負けもありません。ですから投げたことが勝ちにもならなければ、投げられて受身を取ることが負けということにもなりません。相手から仕掛けてくる技に対して投げられまいと抵抗したり、強引に投げようとすること自体、合気道の理に反しています。
相手の気を妨げるのではなく、相手により強い気を出してもらうことが合気道の目的です。気を出して投げる、気を出して受身を取る、というお稽古を繰り返すことで、お互いが発する気をより強めていくのです。実際、受身のお稽古を続けていると元気になっている自分に気づくと思います。
体の健康を維持増進する
後ろ受身や前回り受身のどちらも畳(マット)によって背中が刺激されます。背骨に沿ってマッサージを受けるようなものです。受身の稽古を繰り返すうちに血液の循環が促進され、筋肉の張りがほぐされてきます。そして老廃物の排出やむくみの解消、自律神経が調整されてきます。
相手を元気づけるときや応援するときに背中をポンポンっと叩くように、また決断できない相手に対して「背中を押す」という表現があるように、背中は気を出すために、また健康を維持増進させるために重要な役割を果たします。
どんどん次に進める
もう一つ、合気道の受身の目的は「次の動作の準備」にあります。相手からの正しい導きに対して、心も姿勢も乱れることなく受身を取り、すぐさま次の動作に移ります。そうすることでどんどん次の技に進めることができます。投げ手の方も投げて終わりではなく、すぐに次の攻撃に対して対応できるよう準備をします。その間に気が弛むことも途切れることもありません。
まとめ
以上のように、合気道の受身の目的は
- 体を護る
- お互いの気を高める
- 体の健康を維持増進する
- どんどん次に進める
にあります。
これからも、より強い気を出して受身の稽古に励んでまいりましょう。